アフリカツイン ~Android Autoのワイヤレス化

有線接続の煩雑さ

現行のアフリカツインにはiPhone、スマートフォンをUSBケーブルで接続すれば、Apple CarPlay、Android Autoを利用できるモニターが搭載されており、メーター部分がナビになる、音楽を選択して聴くのが容易になると便利なことこの上なしの機能です。

が、USBケーブルで接続しなければならない、これが面倒と言えば面倒なんですよね。しかも、スマホの接続は「ヘッドセットと車体のBluetooth接続の後」という条件があるので、例えばガソリンスタンドやコンビニに寄ってエンジンを切るたびに、スマホからケーブルを抜いて、ヘッドセットと車体が接続してから再び挿さなくてはなりません。人間とは贅沢な生き物で、最初はおぉ!と便利さに喜んでもそれを享受するための手間さえも省きたくなるんですから罪なものです(個人差あり)。
さらに接続したスマホは、長いケーブルでつないでポケットに入れておくという方法もあるとは言え、ハンドルにホルダーを取り付けて載せておく必要があるところ、光学式の手振れ補正レンズが付いている機種(特にiPhone)だとバイクの振動でカメラが壊れる現象も確認されているのでどうしても気を遣います。

ワイヤレス化の可能性

ならば接続をワイヤレス化する手段はないだろうか?と調べてみると、モトローラがまさにワイヤレス技術に対応していない機種でもAndroid Autoをワイヤレスで利用できるようになるアダプタ「MA1」を発売していたんですね。

「Android Auto」有線接続の車をワイヤレス化できるアダプターが登場

ところが日本ではまだ販売されておらず、調べてみると日本国内では屋外で5GHz帯のWi-Fiを使うのは法律で禁止されているために販売の見込みもなさそうな感じです。さらには半導体不足の影響で需要に供給が追いついていないせいか、定価よりも高い値段で売買されているので、おいそれと試すわけにもいきません。同様の製品をAmazonやAliExpressで探してみるとあるにはありますが、怪しげなメーカーだったり、モトローラのアダプタよりも大きくかさばる感じで、これはと思えるような製品は見つかりませんでした。

Indiegogoでの出会い

何かいいものが見つからないかしらんと検索を重ねていたところ、クラウドファンディングのIndiegogoでまさにベスト・オブ・ベストではないかと思える「Carsifi」が出てきました。しかも資金集め中の企画段階ではなく、既に何度か製品として出荷されており、新たに増産するための注文を集めている段階で、スペックを確認すると、5GHz帯と2.4GHz帯の両方の電波を使えるので日本国内でも大丈夫そうなこと、コンパクトなサイズでデザインも良さげなこと、モトローラと違ってケーブルが本体と一体化していないので万が一断線してもケーブルを交換できることなど、いいこと尽くしです。

Carsifiの公式サイト

これはもう注文するしか!と思う半面、過去の出荷実績があるとはいえ、あくまでもクラウドファンディングなので100%確実に手元に届く保証はないですし、届いたとしてもアフリカツインで正常に作動するかも分からないので迷うところではありましたが、値段も89ドルと法外ではないので、人柱としていっちょやったるわーい!とイチかバチかで注文したのが4月18日。それからしばらくすると、生産を開始して在庫が整ってきたので注文順に順次発送を開始しますというアナウンスがあり、ほどなくして無事に到着し、蓋を開けてみたら注文から1か月も経たずに届いたのはビックリでした。

実際に使ってみて感じたこと

そして到着から約3週間イロイロと試してみましたが、最高なことこの上なし!です。最初に車体への接続設定とスマホとのペアリングを一度だけしておけば、後は何もする必要はありません。車体に付けっ放しにしてポケットにスマホを入れておけば、エンジンをかけて30秒もしないうちにAndroid Autoが利用可能になりますし、有線接続の時のようにヘッドセットの接続の順序を気にする必要もありません。どこかに立ち寄ってエンジンを切り、ヘッドセットの電源を入れたままなら、出発する時にエンジンをかけると(厳密にはキーをオンの位置まで回せば)、勝手にヘッドセットとスマホに再接続してくれます(スマホが接続してからヘッドセットの電源を入れても可)。有線接続の際、たまにスマホを認識してくれずにケーブルを抜き挿しすることもありましたが、この機器については今のところ接続がうまくいかないという状況は起きていません。

有線接続では機種との相性(UMIDIGIのBISON GTでは不可でした)がありましたが、この機器でもそうした相性が存在するかどうかは分かりません。ちなみに今回のレビューはグーグル製Pixel 5aを使ったものです。
アフリカツインと直接つながっているのはあくまでも「Carsifi」ですから、アフリカツインとAndroid機器との相性は吸収されそうな気がしなくもないですが。

ワイヤレス接続は有線に比べるとレスポンスが悪いのでは?なんて懸念もありましたが、ナビ画像の表示や音楽を選択する時のカクツキやもたつき感は全くなく、音声が途切れることもなく、操作性は有線の時と何ら変わらないです。Wi-Fiの電波も結構飛ぶようで、スマホをアルミのパニアケースの中に入れても正常に動きます。ケーブル接続の煩わしさもそうですが、バイクを離れる時にスマホを外し忘れる心配からも解放されますから、ワイヤレス接続の恩恵は果てしなく大きいと言えましょう。自信を持ってオススメします。

いいこと尽くしばかりでデメリットはないの?

ワイヤレス化に唯一デメリットがあるとすれば、使用中にスマホの充電ができないくらいですが、ワイヤレス接続でスマホのバッテリーがあっという間に減るようなことはなく、バッテリーの容量が約4,700mAhの機種で終日使っても半分近くバッテリーが残っている状態でした。

ボッシュのmySPINとか、スマホの接続が最初からワイヤレス化されているアフリカツインがいずれは出てくるかもしれませんね。