泊まり勤務で、仮眠時間が近付いた午後8時過ぎ、自課の部屋に戻ってみるとなにやら探し物をしている。なんでも入社証がなくなってしまったらしい。かれこれ1時間近くも探しているのに見つからないとのこと、クリップ止めで取り付けるバッチみたいなものだから、そんな簡単になくなるはずがない。引き出しを開けたり背広やズボンのポケットを探ったり、机の下や引き出しの奥に至るまで家捜しするけれども、まるで見当たらず、落とした場所の検討もつかず。探す範囲を広げて廊下に出て捜索を始めたところ、部屋の中から歓声が上がった。「どこにあったんですか?!」と興味津津に聞くと、一番上の引き出しの中でペンの下に埋もれていたそうな・・・。いや、引き出しの一番上ってまっ先に探すところでしょ?目一杯引き出せば探しやすい場所でしょ?なーんで、よりにもよってそんなまっ先に探して目に付いてもおかしくないようなところから出てくるわけ?1時間以上探していた苦労はなんだったのー?あまりにも意外すぎるところから出てきてみんな大笑い。まさしく灯台下暗し、盲点中の盲点!多分心のどこかで「こんなに探しても見つからないということはよほど変なところにはまりこんだに違いない」との思い込みがあったためだろう。思い込みが強すぎるあまりに目の前にあるものが見えなくなってしまう、これは怖いことだし気をつけなくちゃいけないなぁと、深く反省させられた。
それにしてもこういう時にはついつい江戸川乱歩の怪人二十面相を思い出してしまう。黄金像の隠し場所を探すのに、凝った場所を選んだ少年探偵団に対して、二十面相扮する老人は、いろりの灰の中に入れただけ。これもまさしく「隠すには見つかりにくいところ」との固定観念を覆すものだった。
気が付かないうちにいろんな固定観念に取り付かれてしまっているやもしれず、気をつけなくては。