地元の映画館で「2012」の上映が始まったので、観に行ってきました。1週間ほど前に席の予約をしておきましたが、そういう時に限って、例によって例の如くに「どうせ今日ヒマだろ?」と夕方に飲みの誘いが入ったものの、ゴメンナサイでした。
ということで久し振りに映画館に足を運びましたが、3割位の入りでした。この1週間結構テレビCMやら新聞広告に力を入れていたのでもう少し入っているものかと思いましたが、さすがに上映終了時間が午前0時を回るとあっては、一般向けの上映ではなかったのかもしれません。
率直な感想ですが、映像は凄かったです。この表現でご察しの方には、何を言わんとしたいかが伝わるのではないかと思います(笑)。以下、内容に触れつつ、思うところを思いつくままに書いていきます。
で、映像は凄いんですけど、リアリティがまるで感じられなかったので心理的に迫るような迫力はあまり感じられませんでした。多分、車で逃げていく後方から道路が陥没したり、地面の割れ目を車で飛び越えたり、倒れてぶつかり合うビルの間を飛行機の初心者がくぐり抜けたりと、多分にマンガ的な場面が結構あったのが、リアリティが欠落している要因だと思います。完全にSFの作品ならそれもまたよしですが、こういうテーマの映画の場合、ある程度現実と重ね合わせられるリアリティがないと「そんな都合よく回避できるかーい!」と恐怖感というか心理的な圧迫感が感じられないんですよね。
映像はさておき内容ですが・・・エメリッヒ監督の大風呂敷映画なのでそれなりの心構えではいましたが、シッチャカメッチャカというか行動に一連性がないというか、素晴らしいまでのご都合主義というか、観終わった後にものすごーく「結局何だったの?」というモヤモヤ感が残りまくります。平たくストーリーを書くと、「平凡な一般市民の主人公が、数々の天変地異や困難な状況をかいくぐりながら別れた妻と子供を助けながら、違法に避難船に乗り込んで助かる」という、なんとも身もフタもない書き方ですが、本当にこんな内容です。
ご都合主義、と書きましたけど、背後から陥没する道路の数メートル先を車で走行したり、未曾有の噴火が起きる中をろくに飛行機を操縦したことのない人間が何の損傷もなく飛んだりと「それはいくらなんでも・・」とツッコミを入れずにはいられない場面がたくさんあります。が、究極の展開はこんなものじゃあありません。
避難船は中国で極秘に製造されているということで、主人公の一行は、アメリカから航空機を入手して中国に向かうことになりますが、途中で燃料切れが起き、道半ばにして海上に不時着せざるを得ない状況に陥ります。燃料補給をしようにも、地上のほとんどは地殻変動による陥没のために機能しなくなっている上、中国までまだ何千キロも残っているため、まさに八方塞がり。「どうやって中国に行くんだろう?」と思っていたら、地殻変動によって中国の位置が移動したために、本来海であった不時着地点が、うまい具合に避難船の建造地の直近に変わっていたって言うんですからもうご都合主義の極みですとも!
避難船への乗船も1人当たり10億ユーロというとんでもない額で、一部の人間しか救われないし、世界の政府は地球がそんな状況になることを一切隠蔽していたのに、直前になって罪悪感に襲われて急きょ発表したり、そんな状況で違法に船に乗り込んで、船全体の危機を引き起こした主人公が助かる様子を見て乗員が歓声を上げたり、主人公の元妻が新しく付き合っていた男が死んで間もなくに、主人公に「愛してるわ」と言ってみたりと、「なんでやねん」のツッコミが炸裂することしきりでした。
そもそも地球崩壊は、「ニュートリノの極性が変化して、本来地球を素通りする粒子が反応を起こすようになり、地熱が急激に上昇したために地殻が崩壊したのが原因」みたいな説明でしたが・・・ニュートリノがそんな変化したら多分宇宙全体が影響を受けます。地殻が崩壊して北極や南極の場所が変われば地球の磁場が変化して地上には宇宙線が降り注ぐことになりますし、だいたい地殻が崩壊したら、原子炉のメルトダウンはどうするんだーとか、被害はそんなミニマムじゃあ済まないと思うんですよ。でも避難船でしばらく過ごしているうちに、地殻の変動も収まって大地が安定し、人類の滅亡はうまい具合に免れました、なんてことになってます。
もともとこういうツッコミは野暮な映画なんでしょうけど、ツッコミを封じるだけのノリと勢いがなかったのが残念でした。観終わった後に多大なるモヤモヤ感が残ってしまうのは、様々なツッコミが原因なのですよ。
でも冒頭の一場面、2010年のカナダでのG8サミットの現場で、「No G8!」と叫びながら群集が抗議している場面だけはやたらとリアルでした・・・というか、そんなリアリティは切なくなるので個人的にはいりませーん。
・・・とりあえず口直しに別のものが観たいです(笑