職場で「暑さを乗り切るために辛いものでもどうですか?」との誘いに夜勤明けのただでさえ睡眠不足で疲労気味の体ではありますが、乗りました。ただいつもの「四川」は少々遠いということで、近場に「四川」から暖簾分けした「四川閣」なるお店があるということで今日のところはそちらに。行ったことのある人の話によれば結構辛いらしいです。
お店に到着してメニューを見ると、こちらのお店ではタンタン麺はココイチのカレーと同じように1辛~10辛で辛さが選べるようになっています。5辛でちょうど「四川」と同じ位の辛さだよとお店の人は教えてくれましたけど、10辛まで辛さがあるのにその真ん中程度だなんて、そーんな中途半端な選択ができるでしょうか?いや、できません。全員問答無用で「じゃあ10辛でお願いします!」との注文に、何度も「10辛って本当に辛いけど大丈夫?ウソじゃないよ?」と聞かれるも「いいです、いいです大丈夫ー」と貫き通しました。えてして大げさに言っているだけでそんなに辛いわけないんですよね。
・・・思えばここが地獄の1丁目、無知は怖いもの知らずだと後に激しく悔やむことになろうとはこの時点で知る由もなく。
間もなく運ばれてきたタンタン麺を見ると、スープの色はさほどの赤さはなく、むしろゴマがたっぷり入っていそうな感じです。「あ、この色ならまず辛くないわ」と一口すすってみると案の定むせるような辛さもなく、まさにそらみたことかと鼻で笑いつつ、そのまませっせと食べ続けていたところ突如異変が訪れました。
最初はまるで辛さを感じなかったのに食べているうちにしびれ・痛さを伴う強烈な辛さを感じるようになり、麺を口に含んだところで咀嚼する余裕などなくただただ飲み込むのが精一杯、頭の芯がぼーっとなるような軽い脳貧血のような状態に陥ったのです。様子を見るとみんな同じような状態でハシを止めて眉間にしわを寄せ、フーフーと荒く深い呼吸、当然の如く肌には大量の汗が噴出しています。
この感覚、かつて「四川」でターラータンタン麺を食べた時と同じで胃の痛みに七転八倒したイヤな思い出がフラッシュバックのように蘇ってきました。それでも男が頼んだものを残すことなどできるか!と最低限麺だけでも食べなくては、と水やご飯の助けを駆りながら奮闘します。なんとか食べきったもののさすがに汁を飲もうという気にはなれません。それいぜんに口に運ぼうとすると、「頼むからもうそれ以上体内に摂取するのはやめてくれ」と体が悲鳴を上げるが如くに胃の収縮が襲ってくるので完全に限界です。
まだターラータンタン麺の方が汁を全部飲み干せた分、まだ辛さ的にはましだったのかもしれません。この10辛タンタン麺の汁を全部飲み干そうものならその場で倒れて救急車で運ばれることになったに違いないでしょう。それほどまでに辛くそれほどまでに危険でした。かつてターラータンタン麺を食し、辛いものにはある程度の自信がありましたが、世の中にはまだまだ人知を超えた辛い物が存在するということを思い知らされちょっとした敗北感を味わわされました。
もうみんな15ラウンド戦いつくしたボクサーのように呆然としながら椅子の背もたれに体重を預け、お腹に手を当てており完全にグロッキー状態で、お店の人から「だから辛いってあれほど言ったのに」と笑われることになったのは言うまでもありません。
なんとか気分が落ち着いたところで店を後にし、当然そのまま近くの喫茶店に甘みを求めてなだれ込みます。とにかく中和しないことには胃のほてりは収まりそうにありません。いやもうクリームコーヒーの冷たさ甘さの胃に染み入る優しさといったらもう!ってな感じでみんな安堵のような恍惚とした表情を浮かべながら無心にソフトクリームを口に運んでました。傍から見たら大人が嬉しそうに並んでソフトクリーム食べてるわけですから異様な光景だったでしょうね。
ようやく胃袋も落ち着いたということでお開きになりましたがその後も時折胃に不穏な波動を感じたりしながら帰りの電車に揺られることと相成りました。明日の朝のトイレが非常に恐ろしいです(笑)。
「四川」のタンタン麺は人に勧めようと思いますが、ここの10辛タンタン麺は・・・ちょっと。多分5辛くらいならおいしく食べられるはず。
でも久々にトラウマになる位の辛さを味わったので満足してます。